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2019.06.25 Tuesday

珈琲と作品

JUGEMテーマ:アート・デザイン

 

 

だいたい週に2度、250グラムずつ珈琲を焙煎する。250グラムの焙煎で焼きあがると200グラムより少し多いくらいになる。焼き加減でそれも変わるのだが、おおよそ20パーセントが水分として蒸発して軽くなる。

鉄製のドラムに生豆を投入してから、ハンドルを回し続けるのだけど、これが慣れるまでは結構辛い。右手がだるくなる。

8分くらい強火で回すと、パチパチという豆が爆ぜる音が聞こえる。これが1ハゼだ。この音はとっても心地い。いや、音として心地いいのではなく、自分のイメージの焼け具合に反応して音が変わるので、心地いいのである。この音が弱かったりすると、ちょっと心配になる。それは火加減がよくなかった時に起こるのだが、気温や湿度による影響だと最近になってようやくわかった。

その音が止むと、火を弱めて時間をかけて徐々に焼きを深めていく。物の本には、スプーンで抜き取って色を確認するとあるけど、僕はそれには頼らない。

焼き加減を決めるポイントは煙の量と香りだ。香りには味が乗り移っていて、集中して嗅ぐと味もわかるようになってくる。この辺はどんな本にも書いていない。色で、ライト、ミディアム、ディープと焼き分けるように書かれている。でも、香りの方がポイントがわかりやすいのだが。色は、デイライトとタングテンでも変わってしまうのに。その辺を心配するのはカメラマンの性かもしれない。

しばらくすると、ピチピチという細かい音がしてくるが、これが2ハゼだ。ここからが深煎りの勝負どころだ。10秒ごとにスプーンで抜き出して、今度はツヤを見る。2ハゼの途中からは珈琲オイルが染み出してくるから、その加減は、大きな目安になるのだ。

ギラギラになるまで焼いたら一巻の終わり。エスプレッソマシンでしか味わえない器量の狭い豆になってしまう。

ポイントはそのオイルが少しだけ豆の一部に滲んだ頃、火をすぐに止めてざるにあげる。

僕はいまだに、冷風気を持ってないので、もう一枚ざるをもって速攻で屋上に登り、ザルからザルへと豆を動かして冷却する。自然冷却だ。今日は、気温20度だったから、予定通りに落ち着いたが、30度のある日なら、すこし早めに上げなければ、焙煎が行き過ぎてしまう。逆も然り。冬の焙煎は冷却が早いから、すこし長めに回すのである。

できた珈琲はすぐに挽いて小さなカップにダイレクトに入れる。そこへ90度くらいのお湯を注ぎ、二、三回撹拌したら、3分待つ。そして上澄みをジュルッとすする。これで、だいたいその豆の味と焙煎のマッチングがわかるようになってくる。こう偉そうに言っても、それがわかってきたのは最近なのだけど。

20年前に巡り合った、学芸大学の自家焙煎の名店「アンクルBUBU」のあの珈琲は、亡くなられたオーナー臼井さんの魂の珈琲だった。その味を求めて7年目の自家焙煎だ。

彼はいつも寡黙に淡々と珈琲を落とす。それ以外はずっと文庫本を読んでいる。客のコーヒーへの反応にだけ静かに意識を向けている。客が味わい終わると、うん、と一言だけ発して値段だけを告げる。

先日、友人を介して知った現代美術家の天野惣平氏の作品展にいってきた。http://artm.town.tatsuno.nagano.jp/event.html

残念にも昨年亡くなられたのだが、ずっと長野県の高遠に静かに暮らしながら、淡々と作品を作り続け、一年に一回地元の廃校になった小学校でだけ作品を発表していた人だ。

その作品を昨年初めてみたときの衝撃はいまだに忘れることができない。宇宙と自然と人の魂の循環を感じるその作品をぼくは心から欲しいと思った。ぼくは、美術館で彼を支え続けたある方に、どこで買うことができるかを訪ねた。答えは、買えないんですよ、だった。彼は生前から作品を発表はしても売らなかった。作品はお金に変えたくないと言ってたそうだ。

それには、いろんな意見があろうと思うけど、その純粋な作品への愛は、ただひたすらに伝わってくる。

BUBUの臼井さんが珈琲を焼く音や香り、丁寧にネルを使ってドリップする姿は、なぜか天野惣平さんの姿と重なる。そこに魂を感じるからだ。いのちを感じるからだ。

作品とは仕事である。僕らが仕事と呼ぶものは業務である。僕には一週間に2度足らずの焙煎だけど、これはやがて仕事に繋がり、惣平さんの作品や臼井さんの珈琲から感じる何かは、今の僕にとってもっとも大切なことのように思えてならない。それをお前さんは忘れていないかい?本来の「仕事」に自分の命を燃やしたい。

 

今月の29日はONE DAY SALONの日です。まだまだ、臼井さんの深煎りの味には程遠いですが、ぜひお立ち寄りください。

目黒区五本木2-28-24 HASUI MIKIO PHOTOGRAPHS

 

 

LEICA Q2 

 

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